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スコットランド紀行(おまけ) Aberdeenにて [英国内旅行]

8月27日(土)~29日(月)
 夏休みに使った鉄道パスFREEDOM OF SCOTLANDが何日か余ったので、有効期限内に使うことにして週末旅行に行くことにした。ちなみにこの月曜日はイングランドのSummer Bank Holiday、年に何日かある国民の休日。但しスコットランドは日が違う(同じ日の年もある。この月曜は違ったようだが、イングランド方面行き列車は休日ダイヤで、エジンバラWaverly駅は大混雑でえらい目に遭った)。
 行き先はアバディーンAberdeen。エジンバラから列車で2時間半、言わずと知れたスコットランド第三の都市。北海に面したブリテン島北東岸に位置し、古くからこの地域Grampian地方の中心都市としてイングランドとも他のスコットランドともやや異なる文化を形成してきた。また、1960年代からは北海油田の基地として発展している。


 途中に立ち寄ったエジンバラのWhisky Heritage Centre。お城の目の前にあり、ウイスキーの製造過程や歴史を簡単に教えてくれる。レストラン・バー・ショップも併設。製造過程はTALISKER蒸留所で見てきたので特に目新しくはないが、遠方まで行く時間のない人には是非お勧め。歴史は面白かった。バーも良かったが、ショップは品揃えは良いものの、やや高い。


 これは列車の中から撮った写真で、ゴルフの聖地(と大学の町)St.Andrews、あるいはその入り口の町。列車が河口からやや離れたところを橋で渡るので、街そのものはバスでないと行けない。父が来英したら一緒に見にだけでも行こうと思う。海岸線沿いにはとんでもない絶壁の上の海に面したコースもいくつか列車から見ることができた。OBは即ロストボールか列車直撃…(苦笑)


 Aberdeenは通称銀色の都。街の主な建物が、近くで産出される花崗岩Graniteの外壁で統一されているためで、晴れているとこの帰る日の写真のように確かに輝いてみえる。但し日曜日のように雨だと灰色の都だ(とほほ)。風も実に強い。オールド・コースが難しいのがよくわかる。
 ホテルは一泊4900円朝食つきのビジネス系で、特記すべきことなし。地下のバーは各種カスク・エールの古いタイプのサーバー(白い陶器製の取っ手が特徴で、構造が単純なので多くの種類を並べやすいがバーマンのウデが必要)がずらりと並んだ、パブらしいパブだった。同種のパブはこの街でいくつか見かけた。


 城門Castle GateまたはCitadale。中心街Union Streetの端に位置するが、特筆すべきはこの向こうがすぐ港湾地帯であること。海に面した街である。この建物は現在でも軍事事務所か何かに使われていた。
 夕食はホテルのレストランで名産・アンガス牛のステーキ…だが、特にどうということはなかった。大して高くもなかったが、これならM&Sの地下で肉買ってきて家で焼く方がマシ。樽出し生エールReal Cask Aleのみ美味。
 
 日曜日は雨・風ともに強かったので郊外に出るのは諦めて、街の見どころを午後の半日で一気に回った(日曜日は休みだったり午後から開けたりする博物館が多い。ちなみにパブは12時30分からとスコットランドの法律で決まっている。イングランドはどうだったかな?)

 まずは海洋博物館Maritime Museumへ。漁業・海運の歴史はどこにでもあるが、この博物館の中心で唯一無二の展示はもちろん北海油田の開発と運用。1950年代にオランダで天然ガスが発見された為、同じ構造の地層を持つ北海での採掘に目が向けられたという歴史は大変面白いものがあるが、巨大な模型が館内の中央にそびえ、石油各社の協賛がイヤでも目に付く。あげく、最上階の「北海油田の意義」なる展示では、「戦後、中東の連中が石油の利権を独占し世界経済を不安定に陥れやがった…俺たちはそれに対抗するため、自前の石油を是非とも確保する必要に迫られたのだった!」なんて感じ(かなり意訳)でその必要性を得々と説いている。コスト高は否めないと思うのだが…それでも、スコットランド人は北海油田が発見された時、本気でイングランドからの独立を考えたという冗談(どっちやねん)がある。


 続いて中世の監獄跡Tolbooth(狭い独房が実に生々しい)を見学したあと、マーシャル・カレッジMarischal Collegeへ。変な綴りだが元は人名で、1593年に開設されたプロテスタント系の学校。現在はアバディーン大学の一部。外観はご覧のとおり、どこかの大聖堂のような感じ。但し、いま改装中だというが、(この国ではよくあることだが)無人の部屋の窓ガラスが割られているなど、荒れている印象。街そのものも、(Newcastleに比べれば)やや安心して歩けない雰囲気を感じた。(後日、夫がAberdeen郊外の出身である超有能実験助手のBarbaraに聞いたところでは、長年にわたりドラッグの問題を抜け出せない街の一つでもあるらしい)


 中もステンドグラスが飾られ、こういう母校ならいいなあ…と思わせる。巨大な博物館が併設されていて、その展示物はさながらミニ・大英博物館といった趣きあり。とくにミイラの展示はなぜここに!?と思ってしまうくらい堂々と置いてあり、あの大きすぎて人も多い中に飾ってあるのをわざわざ見に行くことを考えたらよほどこっちの方がいい。その他、アジアや環太平洋各国の貴重な民族装具(ただし「略奪博物館」ではなく、かつての当地出身の船医がコレクションを寄付したらしい)や、雑多なものが多すぎてついに年代無視のABC順で展示してしまっている階(!!)など、この街を訪れたなら外せない隠れた観光名所!


 Provost Skene's House、市長(というより「知事」に近いか)スキーン氏の官舎。1545年に建立。決して豪邸ではないが、当時の最先端を思わせるよくできた造りで、調度品もさすが英国!と思わせる。現在も市役所の敷地内にあるが、前世紀初頭にかけての一時期このあたりはスラム街で、貧しい子供のためのシェルターとしても使われていたという。

 最後に美術館Aberdeen Art Gallaryへ。これがまたすごい!入ってすぐのホールは現代アートの展示が多く、何故か日本人CGアーティストの作品や原宿少女の像があったりもするが(写真をお見せできないのが残念)、奥に行けば行くほどこの美術館は凄みを増す。英国的な人物画やターナーの水彩画はもちろん、ピカソの素描、マチスにモネにシスレーにロートレックにシャガールにマリー=ローランサン…絵の素養がないもんで、他にもきっと気づいていないものもあるに違いない。ヨーロッパ最北に近いこんな街に、どうしてここまで集められるのだろう?文化というものに対する投資の的確さに畏敬の念すら覚える。20世紀初頭に研究と教育のため実物から型を取って作られた「サモトラケのニケ」をはじめ各種ギリシャ~ローマ時代の彫像のレプリカが並ぶホールが、全くのおまけにしか見えない。スコットランド出身の画家が郷土の自然を描いた風景画は、それでも、そういった巨匠の作品に決して負けないとても味わいのある良い雰囲気のものであった。

 以上、頑張って回ったのが全く無駄ではない、素晴らしい一日でした。今日の見どころはすべてアバディーン市のHP(マーシャル・カレッジ博物館のみこちら)から見ることができます。言うまでもないと思いますが、入場料は全て、無料。


 街の中心で見つけたユニークなポスト。橋の欄干との一体型。(笑)
 この旅行記、切るに切れず長くなってしまいました。もう少しお付き合いを。


 帰る日だけは快晴。(くそっ)バスに乗ってオールド・アバディーンと呼ばれる旧市街の残る一帯へ。20番のバス(アバディーン大学の離れたキャンパスの連絡バスの役割をもつ)が中心まで行ってくれるが、本数の多い2番のバスも街外れの幹線道路を通っていて帰りはこれに乗った。どちらにせよ10分もかからないが、片道1.10ポンドなのに、往復をと言ったら一日券2.40ポンドを売りつけられるところだった(近すぎて往復割引がないらしい)。だまされないように。綺麗な石畳の道。ここは司教区で独立した行政区域だったという。


 アバディーン大学キングス・カレッジKing's College。1495年設立(スコットランドでは3番目らしい)で、後に合併するマーシャル・カレッジと違ってカソリック系(こちらの方が先)。中央部の造りはチャペルと回廊になっていて、大学というよりも日本最古の仏教の学校、そう、我が地元の法隆寺を思い出させるものがある。キャンパスは街と一体化してどんどん広がっていて、近代的な多くの研究施設が街の外に向かっていくつも存在する。こちらには博物館や展示はなくて(あるのかもしれないが、工事中でもあった)大学の受付で徒歩のガイドマップをもらえたが、到底すべて見て回れるものではなかった。動物学や農学などの自然科学系に強いらしいが、石油資源学科やスコティッシュ・アイリッシュ文化学科(ケルト学ってことやね)なんかもあって面白そう。



 聖マハー大聖堂St.Macher's Cathedral(英語では発音しにくくてマーカーとも読む)。アバディーン最古の聖堂で、特に双塔と七つの窓を持つ西の壁(下の写真)はスコットランド建築を代表する荘厳さ。中は古いものから新しいものまでさまざまなステンドグラスや石彫りをもつ普通の聖堂だったが、普段は入れないところにいろいろ隠してある(?)ものがあるらしい。古い街並みのはずれにひっそりと森に囲まれて立っているのが、また良い。


 以上、長くなってしまいましたがおしまい。エジンバラで列車の待ち時間にさまよっていて見つけためっちゃ雰囲気の良い昔ながらのパブ"The Cafe Royal"。中心地の通りの奥にあって、入ってみると意外と大きい。内装は19世紀そのまま。エジンバラ観光は今回も縁なし。人が少なくなった頃に必ず行く予定。今週末は学会ではじめての危険な街Glasgow!(なんてスコットランドな夏なんだ)


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