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研究留学ネット [ヴィザ・留学・研究]

 アメリカに留学するヒトには常識らしいこのサイト。留学前に見た記憶もあるのだが、やはりアメリカと英国では環境がかなり違うのであまり何も感じていなかった。しかしいま見てみるといろいろ面白い。
 たとえば、以下の質問集。D.の答えを書いてみよう(もちろん本家ページはアメリカ向けですので、実際には投稿していません)。

第1問:留学先の探し方
→先輩の後継。だが、間が何年か空いているのと留学形態が違ったので、立ち上げが一から必要だった。探す手間はなかった。
第2問:給料はどこから?
→自費。ここがアメリカと違って、なかなか短期の研究者の給与を出せるグラントがない。ポスドクの就職そのものが狭き門で、いずれ自国に帰る留学医者にまでは到底カネが出ない。自費の良い点は上との利害関係が少なくて自由度の高い研究ができること。もちろん日本側で学振研究員とか取れればそれにこしたことはないが、コネもない単科医大のマイナー科では難しいし、就職してから休職で手当もらって来るのは数年後になるし期間の制限がある。いろいろな事情からやむを得ない自費留学でもあるが、研究生活の上では最高の選択だった。
第3問:留学先選びの最優先条件は?
→自分で選んでいたとしたら、研究内容と論文数か。結果的にはどちらも素晴らしいし、アメリカに行った人たちやメジャー科の先生から聴く愚痴とは大きく違って、3~4本のFirstの論文が完成できそうだ。
第4問:留学期間は何年?→2年。
第5問:留学したい都市は?
→ここニューカッスルが一番。アメリカでは特に行きたいと思う都市がないので、行ってみたい機関ということになるだろうか。なら一度はNIHとか行ってみたいね。あ、うちの日本の教授が行っていたミュンヘンは短期でいいのでぜひ留学してみたい。
第6問:ビザ申請はどうしたか?
→このブログの別項参照。これこそが米国に比して英国に留学する最大のデメリットか。
第7問:車の購入はどうしたか?→帰国する日本人の方から。
第8問:留学の最大のメリットは?
→言い尽くせない。が、何処かの先生の名言でまとめると、「人生2回分生きられたような気分」。
第9問:留学の最大のデメリットは?
→経済的問題、外科医としてのウデ。あと日本側に新しい教授が来られて、その教室の立ち上げに参加できなかったこと。
第10問:留学時の年齢は?→医学博士号取ってすぐに。
第11問:留学時の家族構成は?→結婚したばかりの妻が5人ほど。
第12問:留学先選びに点数を付けると何点?→100点!
第13問:採用時にインタビューを受けましたか?
→その段階で大ボス(名誉教授)権限で既決ではあったが、前年11月の学会中に紹介されて15分ほど。アメリカ的にはこの時に給与の話をするらしいのだが、最初から「給与は出ないぞ」という話だったのでそれもなし。 最近研究の大きめのGrantが取れたが、それでも実際のところ、Ph.D.の教育的実験のカネがかかってやはりパートタイム留学生のお小遣いにまでは回らない現状がよく分かっているので、上記第2問にも書いた通り何も言わないことにしている(これも「言わなきゃなにも始まらない」アメリカとの大きな違い)。
第14問:予想していたことと違ったことは?
→アメリカほどではないが、英国でも研究がかなりグラントにコントロールされるようになってきていること。家庭を大切にしてあまりパブに繰り出さないこと(笑)。ヨーロッパ圏内の飛行機代がすごく安いこと。
第15問:イギリスに持ってきて役立ったものは?
第16問:イギリスに持ってきて役立たなかったものは?
→この2問はまた帰国前後でまとめて書きます。
第17問:留学先の研究室の規模は?
→生殖医学だけでは名誉教授2人、教授2人、スーパーバイザー格3人、ポスドク3人、MRes(日本で言うところの修士というか博士準備過程。実験初心者も結構多い)が何人か入れ替わりで来て、Ph.D.の学生は今いない。優秀なテクニシャン数名。ただし外科学講座全体とのクロスオーバーもあり、それ全体ではもっと規模は大きい。なお、MDは教授とごく一部のみ、あとは全員Ph.D.。
第18問:ボスの出身国は?
→ばりばりの北イングランド出身のジョーディずら。スーパーバイザーはニュージーランド人、同じ部屋のポスドクはポーランド人、俺と同じ立場のMDポスドクがブラジル人。外科系講座全体では英国籍以外では実はポーランド人が最大勢力。ま、これはアメリカとは比較にならない質問。
第19問:留学期間中にかかる生活費はいくらくらい?
→家賃月13万、電気ガス月12000円、水道2000円、食費は週末のTESCOでまとめ買いが月4回として4万くらいか。ガソリン代も高い。小さなCORSAが満タンで一回1万くらいだから、2,3万はかかる。そこに国際学会の費用や交際費もかかるから、まとめると学振で年300万当たっても足りなくなるんじゃないだろうか。もちろん独身で遊びにも出ず地道にラボにこもりきりならもっと切りつめられるだろうが、精神的に追いつめられて結果の残せなかった独身留学医者の例は山ほどあるし、既に実験を教えてもらう段階ではなくて世界に挑戦する段階になっているので(なんかエラソーだな)学会費は惜しまない。

 さて、アメリカに行った人たちの体験談を見ると、「ボスが口だけで全然論文を書かせてくれない人だった」「小間使い扱いされた」といった意見が目につく。前者については論文が数でなく大物指向になった結果の場合もあるようだが、単なるダメボスの場合も。後者はアメリカに留学する場合には必ず起こりうることで、これは給与をもらうのならやむを得ないところもある。不満を言うことについて批判するつもりは毛頭ないが、そこから這い上がる気概がなければ、最初からアメリカではやってゆけないのだろう。
 思うに、日本の研究環境に比べて特に海外が優れているということはない(雑用の多さとかではなく、純粋に研究のテクニックとか資金とかそういう意味で)。それでも海外に出る理由は何か?特にアメリカに行く人たちはそれを確認していないと、辛い目に遭うことも多かろう。英国やヨーロッパはまだ文化を楽しみ、生活を楽しむゆとりがあって、たとえ研究がダメでも人生を楽しむことができるだろうが(笑)、その代わり前述の如くカネはもらえない。ま、自分ではそこそこ頑張っているつもりではあるが。
 もうひとつ。米国留学では英語が上手くならなかったという不満も散見されるが、こればかりは本人の努力ですぞ。大体、英語を勉強するために留学しに来ているわけではないのだから、その勉強をしたいのなら自分で何かしないとね。実はもともと語学留学の類も昔からあまり好きではないし、こちらに来てから真面目に英語を勉強したことなど一度もないのだが、幸い周りが英国人で家でもずーっとテレビがついているおかげか、一時帰国時に初めて受けたとーいっくとか何とかいう試験は、ふざけたチャラ男の本当に医者なんだかどうだかわからないようなアホっぽいヤツが何点取れた勉強法とかいって馬鹿高い糞教材をネット上で宣伝しまくっているその得点くらいは簡単だった。自分の能力に興味はないが、そうやって日本人のコンプレッ糞を煽る商法(しかも自称・医者だ!)には吐き気がして、限りなくこき下ろしたくなってしまう。


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どらとら

「精神的に追いつめられて結果の残せなかった独身留学医者の例は山ほどある」に、ええ、内蔵をえぐられるような気がしました(笑)。最後の段落は、本音直撃でよろしいですね。ナイスです。
by どらとら (2007-02-17 10:39) 

KDN

すんません(笑)…いやいや、医者の留学というのは他の自然科学系の研究者ほど切迫感がないヒトも多くて、頑張って結果の出ない人も多いのですが、ただの物見遊山に終わっているヒトも結構いるのですよ。独身どうこうに関しては、男性医師が独身で留学するとなんか女性(日米英他問わず)がついて帰ってくる例が多いのもまた事実でして。それはどんな留学生でもそうかもしれませんけどね。
by KDN (2007-02-18 08:01) 

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